不法就労助長罪とは/実際の量刑-逮捕はあるのか-雇用主の過失や対応方法は

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3年以下の懲役の可能性あり

3年以下の懲役の可能性あり

電話が朝一番でかかってきて、

私「おはようございます」。

と同時に「私は外国人を雇っているのですが、警察に逮捕されるのですか?」との質問がありました。

朝っぱらから物騒な電話ですが、意外と世の中では、「外国人を知らないで雇うと捕まることがある」と思っている人も多いのです。

確かに、逮捕も状況によってありえますが、その前に確認が必要です。

1. 条文からみた不法就労助長罪とは(入管法第73条の2第1項)

入管法第73条の2第1項に「不法就労助長罪(ふほうしゅうろうじょちょうざい)」の罰則および罰金が示されています。

「三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する」

かなり厳しい罰則と罰金です。

併科するということは、罰則と罰金が両方共に課されることもありうることを意味しています。

たとえば、実際の量刑として「3年の懲役」刑を受け、かつ、「300万円の罰金」を支払うこともありうるのです。

当然、逮捕もあります。

当ブログでも時々出てくる「不法就労助長罪」。

犯罪を起こす気持ちがなくても、知らないうちに不法就労助長罪に問われることがあります。

2. 意外に身近な不法就労助長罪

三百万円以下の罰金

300万円以下の罰金の可能性あり

たとえば、外国人Aさんが、在留資格「技術・人文知識・国際業務」をもって普通の会社に経理職として勤めています。

その在留カードに書かれている「在留期間(満了日)」は、2016年1月15日。

在留期間をあまり気にしていない外国人も意外に多く、「あれっ、1年以上も前に在留期間が過ぎている!」と大慌てになるのです。

そのようなことがないように、在留期間の管理は、外国人本人と会社側ダブルチェックが基本です。

ここで、そもそもの「不法就労って何なのか」から順を追ってみてみましょう。

3. 不法就労とは

3-1. 不法滞在者が働くこと

不法に日本に上陸したとか、ビザが期限切れしたままであるなどの不法滞在者の状態で働くことです。

本来、不法滞在であるということは、強制送還(法律用語では“退去強制(たいきょきょうせい)”)されてもおかしくありません。

そのような状態で、当然、働くことは許されません。

3-2. 入国管理局から働く許可を受けていないのに働くこと

旅行や知人訪問などの短期滞在ビザで入国したにも関わらず働いてしまう場合や、非就労ビザ(留学、家族滞在など)の外国人保持者が、労働を行うに当たり「資格外活動許可」を受けていないことが当たります。

在日の外国人が「資格外の活動」を行って収益を得るときには、必ず事前に資格外活動許可」を取ることが義務付けられています

ここでいう「資格外の活動」とは、入管法で定められているのですが、所持しているビザごとに行ってもよい活動(労働)内容のことをいいます。

3-2-1. 参考例(資格外活動許可を取らないでアルバイトしている場合)

たとえば、「留学」の在留資格をもった中国人Aさんはある大学で、経済学を学んでいます。

この場合は、留学生Aさんが日本国内でアルバイトすることが、「資格外活動」といい原則禁止されています。

Aさんが「資格外活動許可」を所持していない事実を、コンビニ経営している雇用主Bさんが知らなくても、このAさんがコンビニでアルバイトすることが不法就労になってしまいます。

当然、雇用主Bさん不法就労助長罪に問われます

このケースは多いので注意が必要です。

注意事項として、次のような3点があります。

  • アルバイトの時間は週28時間以内であること
  • 風俗業はダメなこと
  • 資格外活動許可」にも期限があること

特に資格外活動許可の期限に関しては、在留カードに記載されているので、在留期限とともに確認が必要です。

さらに注意!留学生が資格外活動許可を受けている場合でも

最近多いのが、資格外活動許可を取得しているのですが、アルバイト先を複数掛け持ちしているような留学生がいます。

この場合でも、2件分を合計して週に28時間以内でなければなりません。

このような場合、あるアルバイト先の雇い主が、他方のアルバイトの事実を知っていた場合なども、最悪ケースとして不法就労助長罪問われる可能性があります

3-3. ビザで許されている活動以外を報酬をもらって行った場合

就労ビザを取得している場合でも、「外国人の活動(日本国内での行動や職)が、所持しているビザ(在留資格)に合っていない、しかも、収入や報酬を得ている」ような場合です。

外国人は、すべてビザ(在留資格)に応じた活動内容をもって来日しています。

来日してから、日本に長期間目的なく居座り続けて、適当に職を見つけて働くということは、基本的に許されていません。

ホワイトカラー就労ビザの代表格である「技術・人文知識・国際業務」ビザをもった外国人Cさんが、ある会社に営業職として雇われ、働くことは構いません。

しかし、夜の空いた時間にコンビニエンスストアでレジ係りのアルバイトを行うことは許されません。

必ず、ビザに応じた活動内容(この場合、「技術・人文知識・国際業務」で定められている業務)を行うことが前提とされています。

この場合、経営しているコンビニに、Cさんを雇い入れた雇用主Dさんのような立場の人は、「Cさんがアルバイトをできないと知らなかった」と言い訳をすることが多いのです。

しかし、雇用主Dさん言い訳は通じず不法就労助長罪に問われます

言い訳できるのは、報酬をもらっていない場合であり、そのときには資格外活動もOKということになります。

つまりボランティア活動(無給)です。

これらをふまえた上で、不法就労助長罪に問われる人とはどんな人なのでしょうかをみてみましょう。

4. 不法就労助長罪になるのはどんな人?

4-1. 事業活動に関して外国人に不法就労活動をさせた者

不法就労になると知りながら外国人に仕事をさせた法人や個人ということです。

法人が懲役刑を受けるのかということですが、何千人もいる会社ならともかく、数人で営んでいる会社では、内容が悪質な場合、代表取締役と言われる役員が懲役刑になることは十分にありえます。

会社の社長(代表取締役)や代表者、責任者などが処罰されることになります。

最近の報道では、不法滞在外国人を自分の会社で不法就労させていたという罪で(不法就労助長罪)、「株式会社◯◯の代表取締役 ✕✕ △夫が逮捕されました」などと報道されています。

会社で違法なことをしていることは、取締役などは関係ないなどとは思わない方がよいということです。

4-2. 外国人に不法就労活動をさせるためにその外国人を自分の支配下に置いた者

これは、不法就労外国人に宿舎等を提供したり、逃げ出さないようにパスポートを預かったり、入国費用の負担するなどにより事実上支配下に置いた者のことを言います。

4-3.不法就労活動をさせたり斡旋(あっせっん)した者

(なりわい)として、外国人に不法就労活動をさせる行為又は前号の行為に関し斡旋(あつせん)した者」とされています。

いわゆる「ブローカー」ですね。

不法労働させる業者側ばかりでなく、そのような悪質業者に外国人を斡旋(紹介)した者も処罰の対象になるということです。

「業として」とされているので、それを職として複数回繰り返し行なっているような人ということになります。

しかし、1回だから良いということでもありません。

5. 知らなかったとの言い訳は成り立たない

「俺は英語が話せないので、あの外国人が不法就労している外国人だなんて知らなかった」というような言い訳が成り立たないとされています。

次からは、言い訳が成り立たない場合をみてみましょう。

5-1. 外国人が下記の諸事情をもっている場合

第70条第1項第1号をはじめ、各号にあげられているものとは以下のとおりです。

下記に示されているような外国人を、事情を知らないで雇った場合でも不法就労助長罪」に問われるということです。

第1号:有効なパスポートをもっていない者

第2号:入国審査官から上陸の許可等を受けないで日本に上陸した者

第3号:ビザを取り消された者

第3号の2:出国準備期間を超えて日本に残留する者(オーバーステイ)

第3号の3:日本人の配偶者等又は永住者の配偶者等が、離婚や相手の死亡などによって、ビザを失った状態で6ヶ月以上経過して日本に残留するもの

第5号:在留期間の更新又は変更を受けないで在留期間を経過して日本に残留している者(オーバーステイ)

第7号:寄港地上陸の許可、船舶観光上陸の許可、通過上陸の許可、乗員上陸の許可、緊急上陸の許可、遭難による上陸の許可又は一時庇護のための上陸の許可を受けた者で、旅券又は当該許可書に記載された期間を経過して日本に残留している者

第7号の2:指定旅客船に乗っている上陸の許可を受けた外国人で、旅券又は当該許可書に記載された期間を経過して日本に残留するもの

第7号の3:船舶等乗員に対し乗員上陸の許可を与えておくことが適当でないと認める場合、帰船し又は出国するために必要な期間を指定するものとする。

期間の指定を受けた者で当該期間内に帰船し又は出国しないもの

第8号の2:出国命令を受けた者で、当該出国命令に係る出国期限を経過して日本に残留するもの

第8号の4:仮滞在期間を経過して日本に残留するもの

これらの外国人の事情を知らなくても、雇用していれば不法就労助長罪に問われると言うことです。

6. 不法就労助長罪にならないためにどうすればよいのか

では、不法就労助長罪にならなためどうしたらよいか?

外国人の雇用主としては、雇用する前に「在留カードおよびパスポートの確認」が必要です。

在留カードの確認の仕方については、以下の記事を御覧ください。

在留カードの確認方法がわかります。

在留カードからは、所持しているビザ(在留資格)資格外活動許可の有無が分かるため確認が必要です。

これを怠った(おこたった)としても、「知らなかった」との言い訳は成り立たないのです。

雇用主の義務とされています。

問題や疑問のある場合には、すぐには雇わずに、入国管理局や専門家(入管業務を専門としている行政書士や弁護士)に聞くことをおすすめ致します。

7.まとめ

  • 不法就労助長罪の罰則、罰金とは罰則として3年以下の懲役、もしくは、300万円以下の罰金を支払うか、両方の罰を受ける可能性があるということです。
  • 不法就労者本人が強制退去されるばかりではなく、それを知らずに雇用している事業者も不法就労助長罪に問われる可能性があるということ。
  • 外国人を雇うときには、パスポートと在留カードを確認して、活動内容、在留期間、資格外活動許可の有無を必ず確認すること。
  • 問題ある場合には、入国管理局や専門家(入管業務を専門としている行政書士や弁護士)に聞くことをおすすめ致します。