移民と難民の違いとは/「移民政策はとらない」とはどういうことなのか

この記事を読むのに必要な時間は約 7 分です。

いま、日本の国会では、何が原因でもめているか知っていますか。

このブログにたどりついたあなたは、当然知っていますよね。

新・在留資格「特定技能1号・2号」の新設をめぐって、与野党が「ああだ、こうだ」と、おおもめしていて、審議も順調に進まないのです。

入管法の改正案が、いつ成立することやら…。

一方で、こんなときには、気をつけなければならないことがあります。

日本での国会議員の発言に顕著にみられますが、その言動にや、真実ではないけれど一聴すると誤解してしまうような言葉やフレーズが入っています。

その言葉やフレーズを信じてしまうと、多くの国民が間違った考えを持つたり、変な方向に導かれてしまうことにもつながるのです。

今日は、そこで、入管法改正にあたり、安倍総理大臣の「移民政策は取らない」を理解するために「移民」を取り上げるとともに、当ブログでしばしば取り上げる「難民」の違いについて、みてみましょう。

まずは「移民」から

1. 移民とは(その定義)

国連の機関である「国際移住機関(IOM)」によると、「移民の正式な法的定義はない」と言いながらも、次のように定義しています。

当人の

  1. 法的地位
  2. 移動が自発的か非自発的か
  3. 移動の理由
  4. 滞在期間

関わらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人。

ここで、[2.移動が自発的か非自発的か]とは、旅行や仕事の都合上の移動などの「自発的な移動」や被災者、難民などの「非自発的な移動」のことをいいます。

図1を参考にして下さい。

図1.幅広い移住の定義

図1.幅広い移住の定義

しかし、移民の定義は、このようなことや理由など関わらず移動している人と定義しています。

また,多くの専門家の意見として、3カ月以上12カ月未満の移動を「短期的または一時的移住」、1年以上にわたる居住国の変更を「長期的または恒久移住」と呼んで区別するのが一般的です。 – 国連経済社会局から引用。

つまり、かっちりとした移民の定義なんてものはないのです。

広い概念なのですね。

実は、この定義を調べているうちに、驚いたことがあります。

以前、私が社会人であったときに、アメリカに1年半ほど、その会社の駐在員として住んでいましたが、この定義からすると、私も「移民」だったことがあるのです。

2. 難民とは(その定義)

国連の機関である国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、難民の定義は、1951年の「難民の地位に関する条約」で定義されています

「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々。

また、上記に加えて、今日、難民とは、

「政治的な迫害のほか、武力紛争や人権侵害などを逃れるために国境を越えて他国に庇護を求めた人々」

を含めるようになっています。

以上のように、難民の定義は、複雑で内容も深刻なものなのです。

3. 移民と難民の違いとは

ここまで読んで、皆さん、わかったと思いますが、

移民とは、定義がラフで、理由や滞在時間など問わず、母国を離れて、移動している人であり、広い概念であるのに対して、

難民とは迫害により母国を追われ出国した人

です。

移民と難民の違い

図2. 移民と難民の定義上の違い

定義上、移民は難民をも含んでいるのです。

こんなイメージでしょうか。

移民イメージ

図3. 移民のイメージ

難民イメージ

図4. 難民のイメージ

4. 日本の国会では「1年以上の移住」を移民として議論しているが

「移民」の定義を「1年以上の移住」として、国会では議論されていますが、なにか深い意味があるのでしょうか。

在留資格は、3ケ月や6ケ月など短期なものもありますが、ほとんどの場合、短期を希望しなければ、大抵は1年以上のものが許可されます。

3ケ月や6ケ月が例外的なのです。

ということは、旅行や医療目的、その他特別な理由による短期滞在を除き、全て「移民」にされてしまうのです。

これは、言葉のマジックですよね。

このマジック、どこから来ているかといえば、実はWikipediaです。

Wikipediaで移民と検索すると、いきなり、一行目から次のような定義から始まります。

移民(いみん)とは、異なる国家へ移り住む事象(英語: immigration, emigration)、また基本的に出生国以外から12ヶ月以上当該国へ移住して居住している人々(英語: immigrants, emigrants)を指す。

しかし、そんなWikipediaの内容を、ちょっと読みすすめると、先ほどの「国際移住機関(IOM)」の定義も出てきます。

一部のマスコミや野党議員は、Wikipediaの冒頭を情報源として、語っているだけなのですね。

ちゃんと読んでほしいものです。

5. 移民政策を取らないとは

法務省が、2019年4月からの導入を考えている新・在留資格「特定技能」では、1号でも、最長5年の在留期間があります。

もちろん、期間内に母国に帰国しても構いません。

一方、先ほど定義を確認したように、3ヶ月の短期でも「移住」、正確には「短期的または一時的移住」と呼ぶのですから、安倍さんが言う「移民政策はとらない」は矛盾することになります。

6. 日本政府の考えている「移民の定義」を明確にすればよいのではないか

そこで、このブログの提案は、日本政府の考えている「移民の定義」を明確にすればよいのではないかということです。

限定で定義し直すのです。

先ほどの国際的な移民の定義を日本だけ変えるのは、本筋ではありません。

そこで、「日本政府としての考えている移民の定義」を明確に打ち出すのです。

移民を「1年以上在留する人」と定義してしまうと、1年の短期留学性も、本人の知らないところで、移民呼ばわりされることになります。

そこで、例えばですが、移民を次のように定義すればよいのではないでしょうか。

日本人にとって、外国人が永住するかどうか、言い換えると、死ぬまで日本に居続けるかどうかが、関心事であり、深く生活にも関わって来ますが、短期であれば、誰も文句言わないでしょう

その条件を、同じにあつかって議論するので、かみ合わないのです

日本政府の考える「移民」定義例

  1. 法的地位
  2. 移動が自発的か非自発的か
  3. 移動の理由

に関わらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人であり、滞在期間を永住と考える人

7. そのために何が必要か

この定義を単に明らかにするだけでなく、この他にも、税金の滞納なきこと(国民)健康保険年金滞納なきことなどとすれば良いのではないかと思いますが、いかがでしょうか。

8. まとめ

  1. 移民の正式な法的定義はない。
  2. 国際移住機関(IOM)によると、当人の(1) 法的地位、(2) 移動が自発的か非自発的か、(3) 移動の理由、(4) 滞在期間 に関わらず、本来の居住地を離れて、国境を越えるか、一国内で移動している、または移動したあらゆる人
  3. 難民とは、「人種、宗教、国籍、政治的意見やまたは特定の社会集団に属するなどの理由で、自国にいると迫害を受けるかあるいは迫害を受ける恐れがあるために他国に逃れた」人々。
  4. 「移民」の定義を「1年以上の移住」として、国会では議論されていますが、なにか深い意味があるのでしょうか。→深い意味はない。議論を混乱させるためのもの。
  5. 安倍総理大臣が言う「移民政策はとらない」は矛盾している。
  6. 日本政府の考えている「移民の定義」を明確にすればよいのではないか
  7. この定義を単に明らかにするだけでなく、この他にも、税金の滞納なきこと、(国民)健康保険、年金滞納なきことが、移民の条件とすればよいのではないか。