難民問題と認定制度-日本での申請状況と運用見直しについて

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ヨーロッパでは、選挙のたびに問題となる「難民問題」

難民賛成派と反対派が票を求めて争い、与党と野党が逆転することもあります。

日本でも、このように好景気になると、世論は2分されているようにみえます。

たとえば、企業経営者、特に建設業や飲食業、製造業などの中小企業の経営者は、深刻な人で不足に陥っています。

そのような背景から、「難民でもなんでもいいから人を入れてくれ」という人が多いのです。

それに対して、「日本人の職が奪われる」「日本が難民を責任持って受け入れる体制にはなっていないので、受け入れるべきではない」という人も少なからず存在しています。

2018年1月12日に法務省が「難民認定制度の適正化のための更なる運用の見直しについてという、今後の難民問題に対する対応措置を発表しました

これは、日本にとってこれからの難民政策に関する重要な姿勢を示すものなので、今日はその内容について解説します。

まずは、現状把握から。

1. 難民申請者数は毎年増加している

法務省発表の資料によると、平成24年の申請者数は、2,545人であったのに対して、平成28年には10,901人というハイペースで毎年増加しています。

平成29年は、処理が追いついていないことから、1年間の申請者数は出ていないものの、1月から9月までの申請者数は、すでに14,043人に達し、平成28年の1年間(10,901人)を超えています。

2. 複数回申請者数の中には、6回目という人が5人もいる

複数回申請数の推移

表1および図1:複数回申請数の推移 (法務省資料からの引用)

平成29年1月から9月までの申請者数である14,043人の内、約90%は、初めて難民申請を行った外国人です。

残る9%である1,242人は複数回の申請なのです。

図1右上に示すように、2回目が1,037人と複数回では最も多いのがわかります。

ちょっと、驚くのは、難民申請6回の強者が5人もいることです。

このような数字をみると、日本の入管制度、特に難民認定制度は「甘くみられている」と思うのです。

審査中強制退去されること無く就労できる勘違いしている外国人が多いのです。

3. 国籍別難民申請者はなぜか難民と関係ない国からがほとんどである

国籍別難民認定申請者数

図2:国籍別難民認定申請者数(法務省資料からの引用)

図2として法務省の資料から引用した「国籍別難民認定申請者数」のグラフを示します。

その前に、緒方貞子さんで有名な国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)がプレスリリースしている「世界で避難を余儀なくされている人の多い上位5カ国」ですが、

  • シリア
  • コロンビア
  • アフガニスタン
  • イラク
  • 南スーダン

とされています。

そこで、図2に戻ってみてみると、難民申請の多い上位5カ国は「フィリピン」「ベトナム」「スリランカ」「インドネシア」「ネパール」です。

この5カ国で、申請者数の約70%を占めています。

どうですか?真の難民が出ている上位5カ国と、日本に難民申請している上位5カ国は一致するどころか、一カ国も重なっていないのです。

真の難民が出ている上位5カ国からの難民申請者はわずか29人なのです。

4. 難民申請者の約95%が正規在留資格で短期滞在ビザが55%を占める

難民申請者95%正規の在留資格をもっています

どんな在留資格をもっているかというと、短期滞在55%、技能実習15%、留学13%、出国準備期間の特定活動4%となっています。

短期滞在とは、旅行や仕事の出張、親族訪問などのために、90日間の滞在が許されている資格です。

技能実習は、最近では報道番組で特集が組まれるほど有名になっていますが、日本での技術習得のために、安価な給与でこき使われることで失踪者が多発している資格です。

その仕事への不満などで、実習先から逃亡する実習生が増えているそうです。

多くの難民申請者が、実習先機関から失踪し、又は所在不明となった難民申請に及んでいます

ということは、難民申請者の多くは難民じゃない外国人なのです。

よく人権派の弁護士や左翼系の新聞が「日本の難民認定制度は、その認定数が少なすぎる」と言っています。

しかし、入国管理局から言わせると「難民でない外国人」を難民とは認定できないというのが本当のところなのです。

「この人たちは法務省の資料をちゃんと読んで報道しているのかしら」と思うのです。

5. 不服申立者は平成28年同時期に比べて約62%も増加している

難民申請したにもかかわらず、認定されない処分(不認定)に対して、法律で「不服申立て」することができることになっています。

難民申請の処理に加えて、このような不認定処分への対応も入国管理局で行うことになり、入管業務全体の遅れにつながっていると思われます。

※この難民認定申請の不認定に対しての不服申立ては、「特定行政書士」と弁護士が、難民申請者の代理で行うことができます。

6. 難民申請の処理の状況について

6-1. 難民認定申請(一次審査)

一次審査処理数は、7,454人です。

表2にその処理内容を示します。

表2:難民認定申請一次審査処理内容

一次審査処理数総数7,454人
難民認定された人9人
不認定となった人6,602人
審査を取下げた人843人

6-2. 不服申立て

不服申立ての総数は、2,680人です。表3に不服申立ての結果を示します。

表3:不服申立結果

不服申立数総数2,680人
理由あり難民認定された人1人
理由なし不認定となった人1,778人
申立てを取下げた人901人

6-3. 認定数および人道的配慮がされた人

正式に難民認定されたのは10人(表2の難民認定された人+表3の理由あり難民認定された人)であり、この他にも人道的な配慮から在留を認められた人34人います。

つまり、難民申請を行い、認可された又は在留を許された人の総計は44人になります。

今までのマスコミの報道では、この数を見て「難民認定人数は少ない」と言われてきました。

確かに、一次審査処理数7,454人に対して、44人は少ないように聞こえますが、44はただの数字であり、問題とすべきは、不認定者でありその不認定の理由にあるのではないでしょうか。

その前に寄り道になりますが、「難民とは何か」「どのような人を難民というのか」について定義をみてみましょう。

7. 入管法の難民は難民条約と同じということ

出入国管理及び難民認定法における「難民」とは,難民条約で規定する「難民」と同じであり,「人種,宗教,国籍若しくは特定の社会的集団の構成員であること又は政治的意見を理由に迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖を有するために,国籍国の外にいるものであって,その国籍国の保護を受けることができないもの又はそのような恐怖を有するために国籍国の保護を受けることを望まないもの」をいいます。

法務省資料からの引用

上記のように定義されています。

法務省はこの定義に則って難民を認定しているのです。

8. 難民申請した理由について

一次審査で難民と認定されなかった申立て内容

図3:一次審査で難民と認定されなかった申立て内容(法務省資料からの引用)

図3に一次審査で難民と認定されなかった申立て内容を示します。

つまり、不認定になった理由です。

不認定者の主な申立ては次のとおりとなっています。

最も多いのは、「知人や近隣住民、マフィア等とのトラブル(約44%)」であり、そのうち、約66%が借金に関するトラブルとなっています。

また、日本での稼働希望を申し立てるものなどもあり、申請者の申立て内容を前提としても、難民条約上のに明らか該当しない申立て全体の半数以上を占めています

これをみると、

知人や近隣住民、マフィア等とのトラブル」が第一位の理由です。

マフィア(日本で言うところの反社会的集団でしょうか)は、ともかくも、知人や近隣住民とのトラブルで日本まで逃げてくるとは信じられません。

また、これらのことが難民申請に相当するとも思えません

9. 難民認定制度が見直されます

9-1. 見直される背景とは

難民とは思われない、または人道的配慮が必要だとは思われない難民申請が最近は急増しています。

また、難民申請から半年経過後は、難民認定手続が完了するまでの間、日本で働くことを認めていました。

そのような運用が「難民申請をすると日本で働くことが許される」との誤った考えが外国人の間に伝わり、この難民申請を濫用・誤用する外国人の増加につながっています。

9-2. 見直す理由とは

このような背景のもと、真の難民の迅速かつ確実な保護を進めるための見直しです

9-3. 今回の見直しの内容とは

法務省発表の難民認定の運用見直しについて、原文ではわかりにくかったので、まとめて表にしてみました。

表4:難民認定の運用見直し

初回申請か再申請かどのような申請者分類措置内容
初回申請又は再申請者難民である可能性の高い人A在留資格「特定活動(6月)」が許可される
初回申請迫害事由に明らかに該当しない申請者B在留制限
初回申請失踪した技能実習生D1就労制限(3月)
初回申請退学した留学生D1就労制限(3月)
初回申請本来の在留資格の活動を行わなくなった後に難民申請をした者D1就労制限(3月)
初回申請出国準備中に難民申請をした者D1就労制限(3月)
再申請者再申請である場合に、正当な理由なく前回と同様の主張を繰り返している場合C原則、在留制限

在留制限とは、「在留すること自体を認めない措置」つまり強制退去となるということです。
就労制限とは、「在留は求めるものの就労は許可しない措置」とされています。

10. まとめ

  • 平成24年以降の難民申請数をみると、年々増加している。
  • 複数回申請者も多く、最多で6回目という人もいる。
  • 国籍別難民申請をみると、UNHCRが公表している「世界で避難を余儀なくされている人の多い上位5カ国の国々」と重なっていない。
  • 難民申請をした時の申請者の在留資格は、短期滞在、技能実習、留学、特定活動(出国準備期間)が多く、それらで約88%を占めている。
  • 一次審査で難民とされなかった者の申請理由で多いのは、「知人、近隣住民、マフィア等とのトラブル(借金問題)」が多く、UNHCR難民とは思われない。
  • 今回の難民認定の運用見直しにより、より難民認定されるべき人が迅速に許可される方向に向かうと考えられる。